越の凾人
森弘之《越の凾人》 1974~75(昭和49~50)年/和紙、ミクストメディア/162.0cm×130.5cm/第19回安井賞展
「越の凾人」とは、富山県に住む、凾(はこ)のような鎧に身を包んだ人のことです。頭はなく上腕を残した胴体が、何か獣のようなものを両脇に抱え、凾の狭苦しい空間に収まっています。作者は陸軍若潮部隊で、爆弾を積んだ小型艇に一人で乗り込み、敵艦に体当たりする訓練を受けました。その体験から、「凾人」を自己の本質的なあり方として生み出したとされます。空に浮かぶ太陽と雲、生命を持続させる細胞や心臓、親子や夫婦の関係。太古の昔から続くそうした事物のイメージが重なり合い、遠大な時間の流れと、その行き着く先に「凾人」があることを意識させます。